門脇正樹さん – 粉体塗装会社の技術が、 色とりどりの「都会の足」に

株式会社ファビタ 代表取締役門脇正樹(かどわきまさき)さんインタビュー (2018.09.28作成)2018.09.28作成

写真:イツモノ編集部  文:イツモノ編集部

ファッション性が高く日常使いにも最適な折りたたみ自転車「CARRY ME」。しかもノーパンクタイヤを選べるので、災害時はもちろん、交通機関の急なトラブルによる帰宅困難な状況でも活躍します。こちらを輸入販売するのが、株式会社ファビタ。創業52年の粉体塗装会社、カドワキカラーワークスが母体です。塗装会社の強みを生かし、78色のカスタムで、自分の好みの色にも仕上げられるそう。代表の門脇正樹さんに魅力を伺います。

 

創業52年を数える塗装会社が手がけるカスタマイズ

 

——ファビタはカドワキカラーワークスが母体となっているのですね。

カドワキカラーワークスは、創業52年目の塗装会社で、私で2代目です。グループとしては、カドワキカラーワークスはBtoBの塗装、カドワキコーティングがBtoCのカスタマイズの塗装を行っています。その中で、自転車の輸入販売を行っているのがファビタなんです。

 

——お父様が始められた会社なんですか。

そうです。30歳の時に会社を継ぎ、今19年目ですね。私が会社に在籍したのは26、7歳の時からです。高校の機械科を卒業して、最初に日産系のプレス屋に入り、そのあと運送屋、段ボール屋、鉄筋屋を経て、今ですね。

※横浜市鶴見区の工業地帯にある粉体塗装工場

 

——製造業全般、色々なお仕事を経験されたんですね!環境に優しい、特殊な塗装を行なっているそうですが、具体的に教えてくださいますか?

塗料に粉を使うんです。粉体塗装専用の顔料があるんですが、その粉にマイナスの帯電をして、塗る製品にアースをとっててプラスマイナスで付けるんです。その付いた状態はまだ粉が静電気で付いているだけなんですけど、それに180℃ぐらいの熱を掛けてその塗料を溶かして塗膜になります。その塗料自体とか、そういったものに一切有機溶剤は含まれてないので環境に優しいんです。それを弊社がいち早く、20年ぐらい前から粉体塗装専業としてやってきたということなんですね。

※ショールームには様々な意匠のサンプルが並ぶ

 

——建築やプロダクトなど、いろいろな実績がありますが、その中のひとつに自転車があるということでしょうか?

そうですね。元々カドワキコーティングというBtoC向けの会社の方でカスタムをやってるんですね。カスタム自転車とかオートバイとか車椅子だとか、そういったことをやってて。そのきっかけになったのが、粉体塗装を始めて、オーストリアから非常にカラフルな粉体塗料が日本に入ってくるっていうのを、私が20代の頃に聞いたのが始まりです。国内メーカーの粉体塗装の代表といえば、緑の公衆電話。他に、配電盤とかガードレールとか、そういったものに粉体塗料は使われていたんです。

※粉体塗装に使用する粉のサンプル

 

——錆びにくい、という特性もあるんでしょうか?

そうなんです。粉体塗装では樹脂の被膜をつけるのですが、1回で厚塗りができるんです。液体の塗料だと1回塗っても10ミクロンとか20ミクロンしか付かないんですけど、粉体の場合1回で60ミクロンぐらい膜が付くので、素材との密着が非常に良いんです。なので、傷がついても錆が進行しないというメリットがあります。

 

——色もたくさんあるんですね。

オーストリアのtiger drylac(タイガードライラック)というメーカーが日本に入ってくると聞いて、色見本帳を見たら、蛍光ピンクや蛍光グリーンといったカラーバリエーションがあったんです。これはすごいことだと思っていたら、社員の1人が「自転車に展開したらどうだ」という提案をしてきたんです。近所の馴染みの自転車屋さんに「こういう色があるんだけど自転車の塗り替え需要とかないの?」って相談して、カスタムがスタートしたんです。それが自転車から始まってオートバイに広がり、オートバイで怪我した人が車椅子に乗ったりするので、車椅子にって展開した感じです。

※工場内には塗装済みの製品が並ぶ

 

車椅子をカラーオーダー

 

——コーポレートサイトにある『社長の挨拶』のところで、幼稚園に行きたがらない車椅子の女の子が、車椅子をその子の大好きなピンク色に塗り替えたところ、外にでるようになった、という話がでてきますね。

そうですね。そのことを知った親御さんが来て「娘にクリスマスプレゼントで塗ってあげた」って言うオーダーも多かったんですが、特に車椅子の価格設定もしていなかったのと、心情的になかなかお金が取りにくくて、最初の頃は「うちからのクリスマスプレゼントです」なんてやっちゃってました。でも、さすがに全く商売にならないので、車椅子関係の人を入れてしっかり商売としてやってもらったんです。ただ、価格設定はできる限り手頃にするように努力しています。

 

——女性も男性も靴とかストッキングでおしゃれをしたりします。そういう気持ちで、自転車や車椅子といった自分の足になるものも好きな色に染めるってすごくいいですよね。

車椅子を塗られる方って、とにかく派手な色にするんですよね。ほんとラメをギラギラに入れてみたり。やっぱり彼らのファッションというか、体の一部なんですよね。

 

——すごくいいことですね、それって。

でも、業界的にカスタムって認められてない世界なんですよね、車椅子って。まず病院の先生が診断して車椅子のオーダーをするんです。だから一人一人サイズが違うんですね。それで、カスタムになると先生が面倒くさがっちゃう。「そこは国の助成金は出ませんよ」という話になります。パラリンピックの時に、日本のバスケットチームをサポートして、全部塗装でマスキングして、日の丸のファイヤーパターンをやったんですけど、オリンピック協会が「福祉にふさわしくない」と言って、それを使わせてくれなくて。

 

——残念ですね。土台は変わらないのに塗装だけで変わるんですね、人の反応って。

変わりますね、全然イメージ変わりますね。

※都会のライフスタイルに合う折りたたみ自転車「CARRY ME」

 

利便性とデザイン性を兼ね備えた新感覚の折りたたみ自転車

 

——CARRY MEの取り扱いが始まった経緯はなんでしょうか?

折りたたみ自転車専門でショップをやっている仲間がいるんですが、パシフィック社という台湾のメーカーから「ショップと近い商売がしたい」って言う相談があり、運搬や倉庫の問題とかもあるので、「じゃあうちで間入りましょうか」っていうことでスタートしたのがこのビジネス。うちも元々パシフィック社の塗装技術指導のアドバイスをしていた関係もあったので。 それで、どうせならうちなりの特徴を出さなきゃいけないねっていうことでカラーオーダーをやっています。

 

——そうなんですね。お客様の声を拝見すると、「他の会社ではなくカドワキさんにお願いしたい」という声が多いようです。粉体塗装の技術力なのでしょうね。

そうですね。うちのやり方は非常に手間がかかるんですよ。まず粉体塗装を世に広めたいっていうのが目的だったんです。昔は「環境よりもコスト」って言われてしまってなかなか粉体塗装が採用にならなくて。それなら、一般の人から粉体塗装を広げた方がいいんじゃないかっていうことで、自転車からスタートしたんです。

 

——自転車が広告塔になっていろんな街を走ってくれるっていうことですよね。CarryMeのWebサイトを拝見した時、色の名前の可愛さが印象的だと思いました。

塗装会社が仕掛けるわけなので、色にもきちんとンセプトを付けて、カラーコーディネーターさんにお願いしてやったんですよね。

 

——輸入して販売するだけではなくて、御社の一番の強みを出しているわけですね。ちなみにBIRDYもCARRY MEも両方折りたたみ自転車なんですけど、折りたたみ自転車、ということにこだわりがあるんですか?

折りたたみ自転車は、通勤でもなんでも軽く使えて、畳んで電車に乗ることもできます。うちとしては、どちらかというと、ライフスタイルの提案をしようと思っているんです。

 

——私も都内の移動が多いので、コインロッカーに入れられるのは、すごくいいなと思います。普通の自転車は入らないですし、駐輪場に停めるのにも時間が掛かったりしますよね。忙しい都会の人のライフスタイルに合った商品だと思いました。

自分の分身のように感じていただいて、好きな色にカスタムして、個性を出される方も多いんですよ。

 

——すごくいいなと思うんです。このコンパクトさで、このビジュアル。ひと目で軽いんだろうなっていうのもわかります。お客様がこのCARRY MEを、買う理由は何ですか?

デザインにまず目がいくと思いますが、実は実用性重視な人も多いんですよ。コンパクトなので玄関先のここのスペースに置けるな、という感じで。

 

——折りたたみ自転車って、折り畳めるっていうところに重点が行ってしまってデザイン的に良いものが少ないですよね。でも、「CARRY_ME」は、フォルムが完成していますよね。

メインの真っ直ぐ伸びた所は、人間でいう背骨になります。、他の折りたたみ自転車はここを折るんです。でも、これは背骨を折らずに1本にしているんですね。折りたたみ自転車で、しかも極小タイヤというほど小さいタイヤなのですが、走りも安定しています。これほど安定して走るのってなかなか無いですよね。同類のカテゴリーでいくとおかげさまで1番いい評価を受けてますね。

 

——通勤で使うのにも便利そうですね。

うちの会社でも2人通勤してますね。レジャーで使われてる方もいますし、休みの日に使われてる方もいます。これだったら折り畳めるので、袋に入れれば電車やバスにも乗れます。

 

——オフィスでも、横に立て掛けておけますよね、これくらいのサイズって。

そうですね。寝かせてデスクの下に置いている人もいますし、ロッカーがある方は、その中にボンと入れちゃってる方もいますし。

 

——都会生活の方が多いですか。

そうですね、それは、圧倒的ですかね。都内とその周辺4県ですね。ほとんどの方が、長く乗りたいと思っているので、購入を決断してさらに「プラス2万円ぐらいで好きな色に塗れるんだったら塗っちゃおうかな」っていう方が多いんですよ。お部屋の中に入れた瞬間、オブジェになるんで、好きな色の方がいいだろうという感覚なんでしょうね。

 

——家の中では閉じてるんですかね? それとも開いてるんですかね?

家の中では閉じている方が多いですね。CARRY MEは、開閉にストレスがないので、閉じたり開いたりがしやすいんです。

 

いざという時に困らないノーパンクタイヤ

 

——折りたたみ自転車は、災害時の移動手段として便利ですよね。パンクしないタイヤも選べると伺っています。

はい。いわゆるノーパンクタイヤです。普通のタイヤとノーパンクタイヤを選ぶことができますが、ノーパンクの需要は多いですね。

 

——災害時は、落下物やガラスの破片などが路面に散らばって、自転車のタイヤがパンクしやすいのですが、そのような時でもパンクしないのでしょうか?

空気が入ってないので、パンクするっていうことがあり得ないんです。特殊シリコンで作られてますから。また、普通のタイヤは自然に空気が減っていきますが、ノーパンクタイヤはほとんど変化がありません。

 

——パンクした時、自転車屋さんに持って行くストレスって大きいですよね。でも、これはいざという時にも、すぐ乗れる形になっているということですね。

中小企業の社長さんが社員さんの人数分買われて、社員のロッカーに全部1台ずつ入れておかれたことがありました。帰宅難民にならないための対策ですね。同じような話は、他の会社からも聞きました。

 

——普通のタイヤは自然に空気が減っていきます。でも、ノーパンクタイヤはほとんど変化がないんですか?

はい、一切ありません。空気が入ってないので、パンクするっていうことがあり得ないんです。特殊シリコンで作られてますから。

 

——カジュアルに普段使いの提案ができて、災害時にも備えておける。これは助かりますね。

 

業界の地位を上げるために

 

——CARRY MEを仕入れる前から、何か面白い取り組みをしたいと思っていたんですか?

業界の地位を上げたいな、とはずっと思っていましたね。「職人」という地位を上げたいという思いがあって、カスタムをやったりしてきましたから。

 

——この取り組みで、塗装職人さんの見られ方が変わりましたか?

一般の自転車やオートバイのカスタムをうちでやってくれたお客様は、やっぱりイメージが変わったって言ってくれますね。試乗会のイベントで、サイン求められることもあります。「誰が塗装してくれたんですか?」って(笑)。

 

——いいですね。お客様と直接つながれるからこそですね。「この人にやってもらった」って、自慢したくなるんでしょうね。

HACOBUNEスタッフのポイント

CARRY MEってこんなにフェーズフリー!

■日常

軽量、おしゃれ、お手軽、コンパクト、これだけ魅力のつまったCARRY ME。車に積んでおいたり、電車やバスなどにも持ち込めるサイズ感なので、通勤、ウインドウショッピング、散歩、駅から少し離れた場所に行きたい時、旅行先で観光地めぐる時、などアイディア次第で、楽しみ方は無限に広がります。

■災害時

CARRY MEはノーパンクタイヤを選べるので、災害時に交通機関がマヒしてしまった時などに重宝します。特殊なシリコンでつくられているタイヤなので、空気が抜ける、パンクするというリスクがまったくありません。コンパクトなので、万が一に備えて会社のロッカーに置いておくのもいいでしょう。また、災害時は、落下物やガラスの破片などが路面に散らばった、パンクしやすい環境になることも予想されます。その中でもパンクを気にせず走れます。

CARRY ME

商品名 キャリーミー
カラー ルナグレイ ソリッド / ルージュピンク キャンディ / ディープブルー キャンディ / ブラックゴールド メタリック
折りたたみ時サイズ 32cm(W) x 25cm(D) x 91cm(H)
重量 約9.1kg(ソリッドタイヤ仕様)
タイヤサイズ 8×1-1/4インチ
ブレーキ フロント サイドプル
     リア ドラム

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